これは若い大学生の2人が映像分野で活躍していく様子や葛藤を描いた小説です。2人の大学生が共同監督をした映画が賞を受賞したところから話が始まります。2人の性格は対照的でその対比が非常に面白いと思いました。この本は結構ためになるようなことも書いてあったり、最近のYouTubeなどのネットビジネスも舞台となっており、ネットに興味のある私はとても参考になりました。
以下ネタバレ注意。
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気になったポイント
私が面白い、参考になると思ったところを紹介していきます。
想いのままにカメラや編集をしたいという願望
「この瞬間カメラを構えたくなる、この両目がそのままレンズに、まぶたがシャッターになればいいのに」なんていう表現があったり、かたや、「頭の中がそのまま編集ソフトになればいいと思う」っていう表現もあり、クリエイティブな仕事をしていると、なるほど、そうなればいいよなって思うことがある共感のある内容ではないでしょうか。
質のいいものに触れろ
主人公の1人の祖父が言っていた口癖で、「質の良いものに触れろ 質のいいものに触れろ」と度々物語のこのフレーズがでておりました。いいものに触れることで、いいものが作れるようになれるってことですね。
スティーブ・ジョブズ
スティーブジョブズに関する記載があって、「毎日同じ服を着ている、毎日同じものを食べるタイプの世界的経営者だった」ということが書いてあって、何で毎日同じ服を着てるかって言うと、服を選ぶという判断を減らす為なんですね。脳が正確に判断できる回数は1日そんなに多くない。だから、服装や 食事などは毎日必ず何かで悩むことがないように同じものにするというような記述があります。これはビジネス書とかでも、物事の判断、決断することの回数を減らすといいよっていうようなことが書いてある時によくスティーブジョブズの例が取り上げられますよね。そんなことがこの小説でも取り上げられています。
神は細部に宿る
「神は細部に宿る」 この言葉も気になりました。神は細部に宿る。明は必要じゃないかと思うんですけれども、細部にこだわって作ったものに神が宿るっていう言うような意味合いですね。このフレーズも度々物語に登場しますね。
本物の料理をたくさん食べなさい
「本物の料理をたくさん食べなさい」というセリフ。料理を目指す主人公の彼女が、そのオーナーから言われた言葉、その人の自伝に書いてあったっていう言葉で、さっきの質の良いものに触れろっていうのと内容的には一緒ですよね。いいものや美味しいものに触れることで学ぶことが大切だということですね。
消費者が対価として支払っているのはお金じゃなく時間
「消費者が対価として支払っているのはお金じゃなく時間」まさしく、そうですよね。お金もそうなんですけれども、お金よりも時間の奪い合いが、特にSNSとかネットのスマホのものに関しては特に時間を奪い合うことをを一生懸命、開発者の人・サービス提供者の人は、考えてるかと思いますよね。まさしくその通りだと思います。
アウトプットにインプットが追いついてない感覚が怖い
この表現 なんですけれども、例えば YouTube とかで 毎日投稿毎日投稿っていうような感じで アウトプットの量がたくさんになってくるとインプットがね 追いついていかないという感じになってしまいますよね。私もXで毎日ポストをしていたときはそんな感じでしたね。
時代は質より量なんだわ
主人公の一人がボクシングジムで ジムの PR の YouTube チャンネルを運営してるんですけれども、その時の運営者の人から言われた言葉で、「だけど時代は質より量なんだわ」という言葉。確かに求められてるのは そうなのかもしれないけど、主人公としては質の方が大事だよ っていう思いもあるっていうね中でのこういう言葉があり、印象に残りましたね。
心の問題
「物を作って 世に出すって結局 心の問題じゃないの」っていうことを、主人公の一人が気づきます。 そして、さらに情報を放った先には人の心があるってことをもっと考えなきゃいけないと思うんですと言っているところが深いですね。「間違えたら 修正 削除 非公開 それで 動画の形は整うかもしれないけど心はそうじゃない」と、適当な動画をどんどん出してダメだったら修正すればいいっていうような考え方もあるかもしれないけど、それを見た人の心っていうのはどうなの?っていうことですよね。心の問題を問いかけているところですね。主人公はこれに気づいた感じなんですね。
それから、「どんな人でも何かを発信できるようになったとして受信するのはいつでも変わらず 人の心なんですね。どんなに情報の発信のやり方が時代とともに変わってもね。受け取り側はいつも人の心なんですよ」っていうことを言ってるセリフなんですけど、 まさにその通りですよね。 そして 主人公の もう一人は映画監督のお弟子さんになってるんですけど、その映画監督の人も同じようなこと言ってて「さっきも言ったように作品の向こう側にはいつだって人がいて心がある」というこのセリフ。やっぱ 作品の先には人の心があるんだよって見てる側にも心があるんだよ ってことをね。この小説は訴えておりますね。まさにそのとおりですよね。
その時間で積み上げた感性を信じなさい
「私の言葉を信じるのではなく私の言葉をきっかけに始まった 自分の時間を信じなさい その時間で積み上げた感性を信じなさい」って言葉があります。これもね 感銘を受けましたね。
どんな思い入れのある場所でも いきなりなくなってしまう
ちょっと寂しい言葉なんですけれども、「どんな思い入れのある場所でも いきなりなくなってしまう。 その言葉がまるで呪文のように頭の中でなっていた」 確かにねこの物語の中では映画館の支配人が変わって形が変わったりとか、レストランのオーナーが変わって提供する内容も変わったりとかっていうのを描かれていて、今まで大事に慣れ親しんできた場所が変わっていく、なくなってしまうっていうこともあるんだよってことを、この小説では訴えかけてるんじゃないかなと思います。
感想
小説なんだけれども、自己啓発のような気づきもある読み応えのある内容でした。主人公の二人の性格が対照的でその性格の違う二人が一緒に監督としてひとつの映画を作り上げたところがもっと気になりました。二人それぞれが自分の道を進む中での葛藤が描かれており、それが現代の映像やネットビジネスの問題点とも一致して、非常に興味深かったです。
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